デリヘル経営
僕が見てきたデリヘル経営者たち
先生のホームページには欠点、足りないものがひとつだけあります
彼は経営者というよりも、スポンサー的な立場。その日、遠方から相談に訪れていた。いくつかの質問に答えた後、彼はこう言った。
「先生に手続きをお任せします。実はこちらへお伺いする前、地元の先生のところへも相談に行ったんです。失礼を承知でこちらへもお伺いさせて頂きました。けど、先生が一番です。お願いしたく思います」
そして彼は、その場で他よりは高いであろう約20万円の報酬をキャッシュで払ってくれた。彼が僕への依頼を決めた理由に、サポートの手厚さもあろうが、彼の質問にその場で全て答えたことも影響していると思う。業務に精通していない場合、「調べて後日お答えします」との回答が返ってくることが多い。他の事務所では、彼を満足させる答えが返ってこなかったのだろう。その彼が言う。
「先生のホームページも事前に拝見させて頂きました。素晴らしいです。ただ、ひとつだけ欠点、足りないものがあります。何だかおわかりですか?」
それは、廃業届のことだった。
「先生のホームページには、廃業届についての記載が一切ないんです」
開業において、廃業のことを説明するのも野暮かと思い、僕は廃業届に関することをあえて記載していないのだが、彼はスポンサーとして、1年後に成果が見込めないようであれば潔く見限るとの考えゆえ、廃業届のことを指摘したのだろう。
彼はある女性に経営を任せていた。僕は立ち上げに至るまで、彼女のサポートを行った。さて、結果を話そう。実は半年ほどで、彼女、いや、彼は廃業を選択した。彼女が目指した方向がデリヘルとずれ始めたためだ。ずれたというよりも、飛躍したと言ってもいいかもしれない。女性の独立、起業を支援するコンサルティング業務へと方向性をシフトした。彼は改めてその経済的支援を行う立場になった。その後、けっして華々しくはないが、それなりの成功を収めている。一方で、彼らのあのままでの2年後、3年後を見てみたかったという気持ちが僕の中にあるのも事実だが、活躍されていることが何よりでもある。
もう一度、挑戦します
彼にとって、二度目の開業だった。最初の開業においては、あることがきっかけで一年もしないうちに廃業させた。
「一度リセットします。けど、必ずもう一度、挑戦します」
撤退は、ある意味、彼のプライドが許さなかった。実は一度撤退し、再度開業するという例はほとんどない。だが、彼は3年後、再び開業することとなった。二度目は場所にこだわった。結果、新規開業の場合、利益が出始めるまでに通常は半年ほどかかるのだが、開業翌月からプラスとなった。システムが当たったことも功を奏したと言える。そして別のエリアで二店舗目を出すことになった。だが、その二店舗目は、同じシステムにもかかわらず、今のところ苦労している。ある意味、この業界の経営の難しさをあらわしているとも言えよう。それでも、僕なんかよりはよほど経営者としてのセンスがあるのは紛れもない事実である。